大学が判決データーベース蓄積(島田雄貴)=1990年10月

大学の法学部において、判決や判例のデータベースを整備する取り組みが行われています。司法記者の島田雄貴が、関連する記事をピックアップします。

判例検索

九州大法学部

九州大学法学部が国内の判例、法令集などを網羅した法学データベースの構築を計画、10月から本格的作業に入った。法学は膨大な資料を研究対象としているが、他に比べてコンピューター利用の情報化が遅れているのが現状。完成すればキー操作1つで判例などを検索し、瞬時に探し出せる。効率的な研究だけでなく、資料調べで時間がかかる裁判実務の面でも威力を発揮しそうだ。

作業を担当するのは、九州大法学部の今里滋・助教授らのプロジェクトチーム(10人)。学部スタッフのだれでも手軽に共同使用できるパソコン機種選定のほか実用的データの入手、蓄積、加工、利用方法の開発などを行う。

米国など海外の判例事例も蓄積へ

具体的には、判例や裁決事例などを入力。さらに米国など海外の判例・法令データベースからもデータを入手して蓄積していく。

弁護士や裁判官も共用

最終的には高度の通信機能と大容量のデータ蓄積機能を持つ高性能コンピューターを導入。九大の大型計算機センターや学外の研究機関のコンピューターと通信ネットワークを組み、大学関係者のみならず弁護士や裁判官、企業の法律実務家らも共用できる判例や文献、各種資料のデータベースを作り上げる予定だ。

過失責任の推論も

データベースにAI(人工知能)を利用すると、事故の内容から過失責任の程度などを推論する「コンピューター弁護士」システムも可能という。

税法や交通事故関係の判例に偏り

こうした法律に関する初歩的なデータベースは商業ベースでも一部運用されているが、商業的価値のある税法や交通事故関係の判例に偏っており、法学研究全般までカバーできていないのが現状だ。

今里助教授の話
京都大学、大阪両大学大学も

この分野では京都、大阪両大学が既に研究に取り組んでいる。膨大な資料処理が必要な法学こそコンピューターを使った情報化が不可欠と思う。データベースの構築で、すそ野の広い共同研究が可能となる。

悪徳業者や判例のデーターベースづくり(島田雄貴Pick Up)=1991年4月

先物取引などのトラブルをめぐり、悪行業者や判決をデータベースをつくる動きが出ています。島田雄貴リーガルオフィスが注目の記事をピックアップします。

悪徳業者との訴訟や示談交渉に活用期待

名古屋弁護士会有志ら

名古屋弁護士会の有志でつくっている名古屋先物取引被害研究会(代表・織田幸二弁護士)が「国内先物取引事件データベース」づくりに乗り出した。増え続ける先物取引をめぐるトラブルに迅速、的確に対応するのが目的。当面、判例など約300件の情報を蓄積し、6月から全国先物取引被害研究会の会員弁護士への情報提供を始める。いわば先物取引に関するデータバンクで、悪徳業者との訴訟や示談交渉の際に有効な“武器”となる情報の発信基地として注目される。

全国先物取引被害研究会で提唱

このデータベース(DB)づくりを、昨年10月に群馬県で開かれた全国先物取引被害研究会の定例会で提唱したのは、名古屋先物取引被害研究会。その背景には、こんな事情がある。

国民生活センターだけ

現在、全国各地で発生した消費者トラブルのDBをつくっているのは、経済企画庁の外郭団体である国民生活センター(東京)だけ。先物取引関係も全国の消費生活センターから寄せられた8000件を超す情報が蓄積されている。

一方的な訴えや相談

しかし、これらのデータは被害者からの一方的な訴えや相談が入力されているだけで「実際の訴訟や示談交渉で活用できる情報はほとんどない」(弁護士会関係者)のが現状だ。

判例データの引き出しが欠かせない

「悪徳先物取引業者の手口はますます巧妙化しており、他の民事訴訟などの準備に比べ3倍以上の労力がかかる」とこぼすのは名古屋の研究会幹事の浅井岩根弁護士。「訴訟や示談を被害者側に有利に展開するためには、判例などのデータを必要なときにいつでも検索して迅速に引き出せる体制づくりが欠かせない」というわけだ。

全国の弁護士仲間から寄せられた関連情報

DBづくりを担当しているのは、同研究会副代表の堀龍之弁護士。現在、全国の弁護士仲間から寄せられた関連情報を事務所のパソコンに精力的に打ち込んでいる。

違法行為の手口

大きな特徴は、業者名、商品名など41項目にわたって、情報をきめ細かく入力していることだ。このうち悪徳業者の違法行為については「無差別に電話で勧誘する」「投機性・危険性の説明をしない」「無断で売買する」といった具合に、だましのテクニックを詳細に分析している。

セールスマンの名前も

最大の特徴は、悪徳業者名だけでなく、セールスマンの名前もデータとして入力していることだ。

示談交渉を被害者側に有利に進める

悪徳セールスマンは、各地の先物取引業者を転々とするケースが多い。しかし、このDBを利用すれば、問題を起こしている悪徳セールスマンの過去の情報を、素早く詳しく入手することができる。

こうしたことから、先物取引をあまり扱ったことのない弁護士も、蓄積された情報を参考にすることで、訴訟や示談交渉を被害者側に有利に進めることができるわけだ。

悪徳業者の顧問弁護士の悪用を防止

このDBを悪徳業者の顧問弁護士が悪用することを防ぐため、情報の提供は全国先物取引被害研究会の会員弁護士に限定する。また、悪徳業者が示談成立の条件として、データを公表しないよう要求しても、会員弁護士はこれに応じないといった規則を設ける方針だ。当面は全国の弁護士からの照会に対し回答を郵送する方式をとるが、将来はパソコン通信を利用して、情報が全国各地で迅速に得られるようにする計画だという。

新横田基地訴訟で国に24億円の賠償判決--東京地裁八王子支部(島田雄貴ジャーナリスト)=2002年5月

在日米軍横田基地の騒音をめぐる訴訟で、東京地裁が損害賠償を命じる判決を下しました。ただ、飛行差し止めは棄却し、将来の賠償は却下しました。島田雄貴リーガルオフィスが、判決報道をピックアップします。

夜間・早朝の飛行差し止めは棄却

在日米軍横田基地(東京都福生市など)をめぐり、東京都や埼玉県の住民5917人が国と米国政府を相手取り、米軍機の夜間・早朝の飛行差し止めと、航空機騒音に対する損害賠償を求めた新横田基地訴訟で、東京地裁八王子支部(関野杜滋子裁判長)は30日、原告4763人(死亡者を含む)に対し、過去の損害について総額約23億9838万円を支払うよう国に命じる判決を言い渡した。しかし飛行差し止めは棄却し、将来の賠償請求は却下した。基地騒音公害訴訟では原告数が最多で、賠償額も最高。原告側は控訴する方針。

最高裁判決を踏襲

米国に対する請求は「米軍機の夜間離着陸は米国の主権行為であり、日本の民事請求権は及ばない」と今年4月の最高裁判決を踏襲し退けた。

将来の賠償請求は却下

判決は、旧横田基地訴訟最高裁判決などと同様、うるささ指数(W値)75以上の賠償を認めた。だが将来の賠償請求に関しては「不確実な事情によって要件を満たしておらず不適法」として却下。国への差し止め請求も最高裁判例通り「支配の及ばない第三者の行為を差し止めるもの」とした。

原告は被害を意見陳述で立証せず
裁判所が「危険への接近論」を積極採用

一方、騒音公害訴訟では初めて、被害を意見陳述で立証しなかった原告に対し国の賠償責任を免じた。また、ベトナム戦争で基地周辺の騒音被害が広く知れわたった1966年4月1日(基準日)以降に騒音を認識しながら転入した人に賠償を認めなかったり、被害地域から転出し、再転入した人らには1割減額するなど、国が主張する「危険への接近論」を積極的に採用した。この点は他の基地訴訟に影響しそうだ。

対米請求分は住民の敗訴が確定
分離審理

同訴訟は、1996年1次、1997年2次、1998年3次提訴し、併合された一方、国相手の請求と米国相手の請求が分離審理となり、1次訴訟の対米請求分は先月、最高裁で請求が棄却され、住民の敗訴が確定している。

石井道夫・防衛施設庁総務部長の話
判決内容を検討し、対処したい

飛行差し止め及び将来分の損害賠償について、国側の主張が認められたことは妥当だ。しかし過去分の損害賠償請求の一部が認容されたことは残念だ。判決内容を検討し、対処したい。